shura

長いだけに始末が悪いというたぐいの失敗作。


「陰陽師」などの映像化の難しいエンターテイメント作品を無難に撮ってきた仕事人滝田洋二郎監督もついにやってしまった感があります。
時代劇というよりはお江戸ファンタジー的な舞台設定ですが、歴史の一切合財を無視しているし、鬼の設定も無茶苦茶としか言いようがありません。

ストーリーは懐かしの「孔雀王」をお江戸風に書き直したような感じですが、荒唐無稽な上に使い古しの展開で退屈もいいところです。

この映画の元々は舞台ということですが、舞台をそのまま持ってきたようなセットはなんとかして欲しかったです。それとも舞台のライブ感を表現するためにわざわざあのようなセットにしたのでしょうか?いずれにしろ感情移入を妨げるだけで成功しているとは言いがたいセットでした。

CGもショボイのですが、これは企画の時点で無理があったのではないでしょうか。今の日本映画のCGレベルで、「お江戸の町が全焼+空中には巨大な阿修羅城が光臨」をCGだけで表現してしまおうというほうが間違っていると思います。

主演の市川染五郎は絵になる男ではあるけれど、一人だけ空回りしている印象を受けます。
宮沢りえは悪くはないんですけれど、17歳ぐらいの役というのは無理がありすぎませんか?


こうして気になったところを書き出してみると、問題は映画にしてはやけに舞台を引きずっているというところでしょうか。あまりに大仰で舞台的なセリフと演技のオンパレードですし、演出も舞台を意識したとしか思えないつくりなので、映画に入っていけないんですよね。

つまるところこの映画の失敗の原因はそこにあったのではないでしょうか。


私にとっての救いだったのは、管野よう子の音楽だけでした。というより実のところは管野よう子が音楽をやっているから観にいったのですけどね。


アーティスト: サントラ
タイトル: 阿修羅城の瞳

アーティスト: 菅野よう子, ビデオ・サントラ, PHILHARMONIC ORCHEST, MEMBERS OF ISRAEL, 山根麻衣
タイトル: MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK

基本的にはアニメ音楽の仕事が多い管野よう子さんですが、jazzからテクノまでなんでもござれの才人で特に上のマクロスプラスのサントラやカウボーイ・ビバップのサントラは名作との呼び声が高いです。

最近はロシアの歌手オリガと組んでいたりします。このオリガが歌うロシア民謡ポーリュシカ・ポーレもまた絶品です。



<ちなみにこの映画を観た時に映画館にいたのは私一人でした。>