絶望的に不作揃いのこの夏、唯一の傑作映画


この映画にレッテルを貼るとすると、イギリス発の低予算B級ホラーだ。

基本的にはホラー映画マニア以外に誰も観ない映画であろう。事実、始まった当初より一日二回上映、それが三週目には一日一回上映になり今にもその使命を終えようとしている。

しかしこの映画こそが、駄作揃いの今年の夏映画の中で唯一の傑作とよべる映画である。

名前の通った俳優など出ていないし、派手なCGなど何もない、しかしこれがまた信じられないくらいにおもしろいのである。


お肌も曲がり角にさしかかった20代後半の女性達が、友情を深めるために企画した洞窟探検。しかしその洞窟の暗闇の中で恐るべき事態が彼女達を待ち受けているのだった・・・。


ストーリーからしてBテイスト満載だし、中身も基本的にはクリーチャーものショッキングホラーだ。しかし若者グループががぶがぶと怪物に食べられるだけの映画とは一線を画すできである。普通のホラーはクリチャーあっての人間だが、この「ディセント」は人間あってのクリチャーで、主題はあくまで人間であり、極限状況が作り出す人間関係の崩壊の姿が美しく表現されている。そして結局一番恐いのはクリチャーよりも人間だという姿勢にほれぼれとさせられる。

また、ストーリーのまとまりが非常によくできていて、人間関係を描く前半部分とその崩壊を描く後半部分のコントラストがこの映画を素晴らしいものにしている。


しかしまぁ、こういってはなんだが、あくまでB級ホラーの中での傑作であるので、そのことは忘れないで欲しい。アホな学生が迷い込んだ森の中で怪物に食べられるというような話が横行しているB級ホラー界で、その古典的ルールを守りながらも意外性に満ちた展開で我々を楽しませてくれる映画という意味での傑作なのである。


とりあえず、ホラー好きの方にはなにがなんでもオススメの一品なので、是非観てもらいたい。ホラーとしては五つ☆をあげてもいい。