ハリウッド映画に毒された人間にはつらい


第二次大戦末期の昭和天皇を真っ向から描いて話題の映画が、この「太陽」だ。

天皇を描く映画ということで、日本人が撮れる訳もなく監督はロシアの有名監督ソクーロフ。一時は日本公開すら危ぶまれたが、無事公開し単館系としては異例の大ヒットとなっている。


映画の中身は作家性が強いため、エンターテイメントや史劇を求めて行った人には、涼しい映画館での睡眠タイムが待ち構えている。映画を観ているというよりは、様式美に染まった能や狂言などの舞台系術を観ている感じに近いだろう。

各言う私も中盤で一度意識を失ってしまった。ただ失う前と後でほとんど場面が変わってなかったのには、おいおいそこまでやるか、と笑ってしまいそうになった。しかしこういった映画を観るといかに自分がハリウッド映画に毒されているかがわかる。ワンシーンが長いので、カットが変わるのを待っていらずにイライラしてきてしまうのだ。これには反省した。


さて、映画を観終わった時の気持ちは、美術館へ行って高尚な芸術を見た後の、なんだかわからないけどなんだかいいものを見たのかなという、あの気持ちに非常に似ていた。

しかし、よくよく考えてみると誰も教えてくれない昭和天皇の普段の姿をこれほどの説得力をもって描き出したのには見事としかいいようがない。周りの人間は皆天皇を敬い、奉り、その実誰も天皇を理解せず孤立を深めてゆく姿に切なさを感じる。

そして、この映画をイッセー尾形抜きには語れないだろう。恐ろしいまでの様式美とそれに答えるイッセー尾形の昭和天皇はもう演技とは思えない。


硬いだけではなくておちゃめなところもグッド、「ヘイチャーリー!」