マ・マイケル様おやめくだされ!あなたに女は撮れないのです!!


マイケル・マンが死ぬほど好きな私だけど、これは無理。今回は主題のひとつにコリン・ファレルとコン・リーの禁じられた愛があるのだけど、これがまったく描けてない。コン・リーの下手な英語は聞いてるだけでイラっとくるし、コリン・ファレルとのからみに愛や切なさを感じられない。さらに年増と落ち目の情感なきラブシーンがそれにトドメを指している。ここまで恋愛が撮れないとはさすがはマン監督ある意味立派だ。

ただしそこを除けは今回もマン節は健在で、いたるところにマイケル・マンの実力の片鱗がうかがえる。

毎回こだわらないところにこだわったオープニング演出を楽しみにしていたが、今回はついにオープニングがなくなったところにはニヤリとさせられた。さらに画面に銃が登場するだけで世界が一変する。「ヒート」では銀行強盗がM-16で市街戦を展開するという荒業で圧倒的な銃撃戦を見せたマン監督だが、今回はなんと装甲車攻撃用の大型狙撃銃バレットM82(多分)まで出す気合のいれっぷり。つくづくこの人は銃と男だなと、納得させられる。後半の闇夜を切り裂く迫力の銃撃戦はお見事。

前作「コラテラル」で開眼した夜景も健在で、高感度カメラで撮った夜のシーンが印象的だ。できるだけ照明を使わないで撮影することによって背景の夜景が綺麗に浮かび上がってくる。これは普通のフィルム撮ると暗すぎて決して撮れない。かなり感度を上げて撮影しているためノイジーだが、それもいい味を出している。

さらに今回は新しく車や小型ジェットなどの乗り物系にかなりの力を入れている。夜の高速をバックファイアー出しながら疾走するフェラーリに、海の上をすべるように走るジェットボート。それら高馬力のマシーン達の咆哮にも似たエンジン音。スピードオタクでなくてもグっとくるものがある。やっぱりこの人は男だ。

俳優人は今回はかなりの不作といっていいだろう。英語が駄目なコン・リーは言わずもがな。コリン・ファレルは迫力不足だし、ジェイミーはタフガイより「アリ」や「コラテラル」のような駄目な男系が似合っている。唯一拾い物だったのは、悪役ホセ・イエロを演じたジョン・オーティスだろう。何も語らず表現もせず、ただ顔のアップだけですべてを語らせるマン監督の独特な手法の中で、彼だけが男の色気を表現できていた。


それと、昔のTVドラマ「マイアミ・バイス」のファンの人は要注意、マイケル・マン監督はこの映画で「マイアミ・バイス」を撮る気はなかったよう。「マイアミ・バイス」は制作費を集めるための神輿であって、中身はまったくの別物なので、その辺は覚悟して行ってください。

あれやこれや書いてきたけど、やっぱり自分はマイケル・マンが好きなんだなぁとつくづく思った。
また次回作まで胸を焦がして待ち続けます。できれば3時間銃撃ちっぱなしの映画にしてください・・・。