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韓国四天王の一人ポン・ジュノ監督の待ちに待った最新作!・・・しかしクリーチャー物とは・・・


 ポン監督の前作「殺人の追憶」は信じられないほど素晴らしい作品だった。娯楽作ながら線が太くまったくぶれない脚本、特徴的な雨のシーンをはじめとした美しい映像、ダメ刑事を演じたソン・ガンホの演技、どれもが高レベルでマッチした刑事ドラマの傑作だ。黒澤監督の「野良犬」に匹敵する刑事物はこの映画くらいなものだろう。グエムルとは少し話がそれてしまったが、とにかく素晴らしい映画なので、まだ見ていない人がいたらぜひ見てほしい。後悔だけは絶対にさせない。


 さて、そんな訳でこの「グエムル」を死ぬほど待ちわびていたのだけど、冒頭にも書いたように若干不安だったのが、この映画がクリーチャー物だということだ。ポン・ジュノ監督のフィルムはこれで3作品目、処女作は、お犬さま虐待コメディ「ほえる犬は噛まない」、2作目は先ほど書いた刑事ドラマ「殺人の追憶」、てか2作品目であのクオリティは信じられない・・・。まぁそれは置いておいて、コメディ、刑事物ときて、3作目でクリーチャー・・・はたしてこのコメディ的要素の強いポン監督にホラーが取れるのかと、無節操振りにワクテカながらガクブルした訳である。しかしそんな私の不安は面白い形で裏切られた。この映画はまぎれもなくポン・ジュノ監督の作品であり、コメディでありクリーチャーであった。つまるところ下町人情喜劇であり怪物ホラー映画であったのだ。何を言っているのかわからないかもしれないが、この相反する要素がミックスされた不思議なジャンルが見事に成立しているのが、この「グエムル」なのだ。要は凄い映画ってこと。

 クリーチャーもののセオリーをすべて破る野心的な作りなのに、何ひとつ破綻していないのが凄い。やはり「家族」というテーマがあって、それを芯としたぶれない映画作りが成功に導いているのだろう。


 ソン・ガンホをはじめとした俳優人はポン・ジョノ監督のいつものメンバーなのでいまさら言うことはないが、CGで作られたグエムルちゃんは中々ファニーな動きでいい感じだと思う。


 この映画だけに限ったことではないが、韓国映画と日本映画のレベルの差を改めて感じさせられる映画だ。もちろんそれはCG製作のレベルの差という訳ではない。野心的な映画作り、オリジナル性、映像美、どれもこれも映画的な部分で日本映画は足元にも及んでいない。とくに原作つきの映画ばかり作って、映画界の力をどんどん低下させている日本の状況は末期的だと言っていい。グエムルは日本流で言えば、寅さんの世界にゴジラが登場したようなトンデモ映画だ。だが、それでもしっかり娯楽作として完成していることが凄いのだ。日本はこの映画から学ぶところがたくさんある。




韓国四天王・・・韓国を代表する四人の監督、ポン・ジュノ監督、キム・ギドク監督、キム・ジウン監督、パク・チャヌク監督のことを指す。




アミューズソフトエンタテインメント
殺人の追憶 ☆☆☆☆☆
この傑作が1500円とは、信じられない時代がきたものだ・・・。この映画に限らず自分が4000円で買ったDVDが次々1000円ぐらいになっていくのには少々イラダチが・・・。